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キヤノンとニコン

キヤノンとニコン。
旧来からプロフェッショナル向けカメラ市場ではそのシェアを二分しており熾烈な戦いをみせてきた両者だが、それはデジタル一眼レフ市場においても例外ではない。古豪のカメラメーカーとして争ってきた両者であるが、そのスタンスは全く異なる様相を呈していた。

デジタル一眼レフ市場においてまず抜きん出たのはキヤノン。EOSkissシリーズ(通称ママカメラ)で培った一眼レフ未経験者・潜在市場への購買喚起を促し、結果EOSkissデジタルシリーズは爆発的に売上がった。また、デジタル一眼レフ市場のパイ自体の拡大も促した。パイを拡大させつつ、そこでのシェア拡大も達成するというまさに王者の行進の如き成長。キヤノンの国内販社であるキヤノンマーケティングジャパンは僕の前にいた会社だが、コンシューマ製品を統括する芦澤プレジデントは「右手にシェア、左手に利益」が口癖の人だった。
序盤戦、完全にニコンは後塵を拝すかたちとなった。

ところが、ここにきてニコンが強い。

***引用***
2007年上期(1~6月)はニコンが低価格機のラインアップ充実でキヤノンを逆転、初めて首位に立った。
*********

こうなるに至った経緯は、ニコンのCMにキムタクが登場しはじめてから。
元来、ニコンというのは不器用・実直な企業だった。またそのようなイメージを大切にしていた。一眼レフカメラを好むものは、ぶっちゃけていえばヲタクであり、キヤノンのようなカメラメーカーではなく、レンズメーカーとしてのニコンを好む傾向があった。ニコンのコーポレートアイデンティティは、キヤノンとは一線を画するところに存在し、それはコンピタンスであった。

最近のニコンの戦略はこれまでの自己のあり方を根幹から覆す、コーポレートアイデンティティの大転換。キモタクを起用し、先の新製品発表会では知花クララを起用し、クラブサウンドを流し、華やかで先進的なニコンブランドを印象付けた。


↑ニコン新製品発表会(知花クララ)

製品戦略でも、これまでは中級~高級のハイエンド層を対象としたデジタル一眼を主展開していたが、報道業界・広告業界(新聞社とう)でキヤノンに全機リプレイスなどを食らってしまってからは、矢継ぎ早に一般コンシューマ向けのラインアップを拡充。ニコンが本体の実勢価格約6万円の低価格機「D40」を発売した昨年12月以降、逆にキヤノンはニコンの後塵を拝することになった。「デジタル一眼レフ市場は10万円以下が主戦場であり」「入門者へのターゲッティングが必要」との市場の状況の機微に対して迅速に手を打った。自社の培ってきたアイデンティティを転換してまでのニコンのこの舵取りの妙に、キヤノンとしては白旗を上げざるをえなかった。

他方、キヤノンもこのたびEOS40Dの発売によって、中級機のラインナップを更に拡充させた。ニコン関係者にいわせるところの「鬼のラインナップ」。そして、kissシリーズによって狙っていた30歳代・家族・子持といったメインターゲットに加え、定年を迎え潤沢な退職資金をもったシニア層を耽々と狙っている。
渡辺謙をCMに起用し、中級機として異例のTVCMを、これまた異例の広告費を使って流しまくるとのこと。


↑キヤノンマーケティングジャパン新製品発表会(渡辺謙)

一眼レフには一つの特性がある。
カメラ本体(ボディ)のレンズ接続部分はマウントとよばれ、各社で仕様が異なる。
つまりキヤノンのカメラを買ったものは、キヤノン(実際にはタムロンなどの純粋レンズメーカもあるが)のレンズしか使えない。キヤノンのレンズをそろえると、なかなかニコンにうつることができない。
強烈な囲いこみが発生する。

一眼レフをまだ持っていないが、今後購入を考えている潜在消費者。
ここへのアプローチははてさてどちらが優位に駒を進めるものか。


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