ITポートフォリオ戦略論 [書評]
いわゆる仕事本。
ポートフォリオとは元来財務投資にまつわる用語だが、IT領域においてもポートフォリオを用いて投資妥当性や、ROIを考慮した投資を行うべきであるとといている本。この書籍では、ITポートフォリオ戦略が何故必要か、そしてそのベネフィットは何か、具体的なアプローチ手法にはどのようなものがあるかについて実例を交えながら論を展開している。
理想のみを追従した理論に終始することなく、実際にITポートフォリオに取り組む際に懸念されること、例えば業界別の投資比率や失敗例から抽出された教訓など、を随所に盛り込んでおり非常に好感が持てた。
実務を経験した者からすれば「ITインフラ統合は理想的であるが、各事業部長から業務オペレーション面での柔軟性が欠如するのではないかと領土侵犯のような誤解を与え、反発を食らうことがままある。」といった指摘には、思わずあるあると頷いてしまう。
今ちょうど、とある会社の全システムについて中長期を見据えた投資配分、投資スケジュールを考えるプロジェクトについている。最も苦心するのは、投資評価方法である。システム規模、インフラ統合による年間削減額など定量的指標については比較的容易に求めることができる。DCF法を活用するケースも多い。ただ、定性的にならざるをえない指標・要件、例えば政策上の重要度等についての取扱いが困難を極める。定量指標と定性指標をそれぞれどう重み付けして、投資の優先順位等を決めればよいか。全ての要素を計量化することは不可能に近いし、仮に計量化したとしても、その算出式によってはじき出されたアウトプットの妥当性の判断は保証されない。ここは最終的にはクライアントと膝を突き合わせて、泥臭い調整を重ねながら決定しなければならないことは明白なのだが、何とも自分の中にしこりが残る感じがして気持ち悪い。
と思って色々とネットを徘徊していたら、DCFやリアルオプションを金融工学以外へ適用させる取組みはまだそれといった成果も出ておらず、解はなさそうだった。
うーん、もやもやして寝れない。
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