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パパとムスメの7日間 [書評]

近年はやりのヤリスギ感の否めないメディアミックスの産物。
アニメから小説に、小説からドラマに、ドラマから映画に、映画から舞台に。

パパとムスメの7日間に出会ったきっかけはTBSの同名ドラマ。
舘ひろしと新垣結衣(ガッキー)。
異色のコンビネーションが織り成すドラマに少し興味があった。
そしてはまった。

八重洲ブックセンターに別件で寄った際に、ドラマの元となった小説が山積みになっているのをみかけ、ついついレジに運んでしまった。

ストーリーは至極単純明快である。
世代の違いというありふれた理由から、父と娘の間には表面上はそうではないが、その実、マリアナ海溝のごとき深い溝ができていた。
とある事故をきっかけに、二人の身体と心がいれかわり、互いに真逆の生活を強いられることに。
父親は女子高生の立場にどぎまぎし、娘は大人の仕事場に驚きを覚える。
その模様を描いた7日間のストーリー。

人間は他人になることは出来ない。当たり前のことであるけれど、そういった意味で「客観性」を究極的に体感することなどは実は出来ないんである。(客観性を人一倍感じ取れる人間が、小説家であったり、そしてトップセールスマンであったりするわけだけれど)

その客観性を筆者は上手くついている。
40をこえたおじさんが突然女子高生となり高校生活の中に放り込まれたら何を思うか。そして、まだ20にもならない少女が、都合や社交辞令の渦巻くビジネスの場に身を置いたとき何を思うか。秀逸なのは、お互いに現状に戸惑いながらも、「おかしいところはおかしい」と疑問を持ち行動するところにある。僕らの世界は、僕ら自分自身で尺度をつくり、結局時間の緩慢とした流れの中でそれを常識と思い込む。究極の客観性に身を投じたパパとムスメは、文字通り、他人の立場でものごとを解釈することで、成長を遂げる。

一時の邂逅をえたパパとムスメの物語だが、最後はこういう文章で結ばれる。

「おそらく、小梅(ムスメ)のいうとおり、これは特別だったのだろう。これからも小梅とわたしの関係は変わらないはずだ。ろくに口もきかず、話すこともなく、今までと同じように。
私には娘の気持ちはわからない。そして小梅にも父親である私の思いは伝わらないだろう。それを私たちは今度の不思議な経験を通じて理解した。」

互いの立場を体感することでわかったのは、けっきょくは自分と他人は違うという事実。
しかしその事実を正しく認識したところに、相手への許容があり、認知がうまれる。
そういう気持ちよい真理を伝えてくれた本だった。

ただ・・・

漫画みてーなもんだな、3時間で読めたぞ…。これで1700円か。。。


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